まだ続く奇跡の先には何かが待っている もう一度あの場所へ行こう

 

奇跡の場所

5月の長い連休も終わりに近づき、お互い会いたいと強く願うようになっていた。

明後日行こうかな、あの場所へ。hisaが伝えた。

するとnaoも同じことを考えていたと言う。

実は早朝一人で家からウォーキングで一周りしてたnao。帰ろうと見上げた標識にあの場所の名前が書いてあった。

明日は行ってみようか。そう思っていたんだ。

それを聞いたhisaも実は数日前からあの場所へ行くイメージを抱いていたことを明かした。

 

もう決まってたんだ。行こう一緒に。

 

運命に従っても 運命は自分たちが決めるんだ

 

遠い過去の記憶、思い返しても何でも無さそうなものの一つ。
そんな昔の記憶の中にずっと気がかりな場所がある。
そこに何かがあるかも知れないと思っていることがあった。
もしかしたらあなたにもそんな場所があるんじゃないかな。
 
 
ずっと忘れずに覚えている経験をしたその場所。そのことに意味があるのかないのかはわからない。なんとなく不思議な体験の記憶が残っている。
 
 
今日はそんな場所に行ってみる。運命の人と一緒に行くことになるとは夢にも思わなかった。
 
二人と何か関係があるのかないのかは、わからないし、そこでは何も気付けないかもしれない。
 
その場所はnaoの住む家から徒歩でも30分程度の距離にある。
これは何かの意味があると思ってもおかしくはない事実の一つ。
でもその意味はまるでわからない。
 
10代の頃ここに来て感じた不思議な場所。不思議な体験と呼べるものかどうかさえもわからない。
小川
hisaが小学生の頃遠足で訪れたその場所。
遠足の自由時間にあたりを散策をしているうちに道に迷ってしまった。みんながいる場所への戻り方がわからずひたすら森の中をさまよった。
そして、飲み物もなく喉がからから。どうしようもなく喉の乾きを覚えたその時、小川が流れているのに気づいた。
生まれてこの方、小川の水を手にすくって飲んだのはこの時が最初の経験。このまま最後の経験になるかも知れない。
この上なく澄んだ小川の水は日に照らされて、何故か飲めると信じて疑わなかった。
とにかくたくさん飲んだ。小川に顔ごとつけて水を飲んだ。生き返った心地がした。その後も水のせいで腹痛を起こすこともなかった。
やがて、みんなのいる所に戻ることができた。誰一人として道に迷ったことを知ることもないうちに。
時間が止まっていた?まさかそんなことはない。
その時の記憶が何故かずっとずっと記憶の片隅に大事に置いてあった。
何十年もたった今もそのことを思い出す。
 
森の中
 
偶然の連続により、今日二人でこの場所に行くことになった?
どんな現実論者でも、目も耳も塞いでも聞こえてくる声には勝てない。
今日二人でこの場所に辿り着いた瞬間、恐らくそれは運命づけられていた到着なんだ。
 
たとえ何も起こらなくも、何も気付けなくても、間違いなく何かが始まる。
 
気になるものは、避けては通れないから、正面から立ち向かう。導かれるようでいて、むしろその場所を二人の目の前に持ってくるんだ。付き出すように。
 
何かが起こることを期待なんかしない。何が起こるかを決めるのはいつも自分たちだから。
 
決めたよ。
 
今日この日をさらに次のステージに向う一歩にしよう。
 

何が待ち受けていようとも乗り越える 道なき道を行く

道なき道
連休が始まってもう何日会っていなかったのかな。
ずっとチャットで会話は続くから、誰よりもすぐそばにいる感覚があった。
それでも、会うと全ての感情が入り乱れ、喜び溢れる時間を感じた。
さあ行こう。
あっという間にその場所の入口にはやってこれた。そこから道は二手に別れていて、すぐに景色を見渡せる右手の道を選んだ。
昨年hisaが一人で来たときに見たその場所まで向かったんだ。
そこからの眺望は崖の下に向かって広がる景色。すぐにその先に続く道へ向かった。
崖
ちょっとした山道を下ると、あっという間にさっき見渡した景色の下まで降りてこれた。
さっきまでいた上の方を見上げると、大したことのない崖程度にしか感じなかった。
上から見ると壮大に広がる大地のように感じながらも、下から見るとちっぽけな崖程度の頂き。
そのまま工事現場のようになっている場所の突き当りまで行くとそれ以上は柵があり進めない。
柵の向こうは国道が走っている。
日常と非日常は隣り合わせ。既知の中にはっきりと未知は存在している。
もう一度上に戻ろう。次は反対側のルートで。
戻りのルートの入口には無人の研究施設がひっそりと茂みの奥に見えた。その真横を通り過ぎ、かなり急な山道を登り始めた。
途中、茂みが道を覆い始めて歩きにくい場所がたくさんあって、軽いトレッキング程度のはずがハードな登山になってしまった。
それでも降りてきた反対側のルートのようにすぐに元の上まで戻れると思っていた。
途中また別の絶景のような崖の上の場所があり不思議な感覚を覚えた。
最初見た崖の下に広がる景色でもなく、下に降りて見上げた景色でもないものがそこには見えた。
深い谷のようなもの。どうやってそこまで行けるのか見当がまるでつかない光景。
やがて絶景をあとにしてさらに進んだ。山の開けたところに突然現れた電機設備の建設現場を通り過ぎた。この日は誰もいない現場。
そして、じきに元の場所に戻れるはずだからと、道なりにどんどんと進んで行った。
森
何かを求めてさまよった山の中で、見つけたものとは人生の縮図なのかもね。なんて大袈裟な喩えようなのかな。
でも、確かにそれは的を外してはいない。山ともいえない森の中をさまよいながらたどり着く出口。そんな予感を感じていた。
 
暫く歩くと確かに人が通っている踏み跡があり、ピンク色の目印のテープも木に張り付いてあった。大丈夫。
そのまま歩き続けていると、茂みがさらに濃くなり始めた。心の中では焦り始めた。まずいな、道をどこかで間違っていた。
そしてやがて道は行き止まった。これ以上は進めない。引き返そう。正しい道への分かれ目まで。
どんどん下界の騒音が近づいても、木々の間から見えているのに辿り着けない。すぐそこにある日常へ。
登山用のアプリで位置を確認した。この先はもう道はない、戻ろう。
迷うはずのないところで道に迷う。ここは名もない山。
山奥
スマホのアプリを頼りに引き返していると、naoがあるものに気づいた。
木に貼り付けられた黄色いビニールテープに書かれた行き先のメモ。
そのテープには山の上へ戻る方はこちらと、下山する方はこちらと両側に矢印と行き先が書いていた。
 
助かったね。これで下山できる。
その後いくつも黄色いビニールテープが二人を導くように行く先に貼り付けてあった。
導かれてここに来て、導かれるがままに森から抜け出た。
そして安心したのもつかの間、また柵があって閉じ込められている状態にいることに気づいた。
するとnaoが柵の端に外に通り抜けれる隙間を見つけた。
戻れた。いつもの日常がある場所に。
 
壁一つ隔てた別世界から、元の世界へ。
帰路の道すがら、二人で話した。
あのテープのこと。後で思うとあの黄色いテープ、なんであんなところに貼ってくれてたのかな。
茂みの外から、ついさっき降りてきた方を見ると何だか変な感じがした。
こんなところからわざわざあの山の上へ行こうとする人がいることを。
親切な人がいるね。
もしかして。。。
誰かが、二人がここに来ることがわかっていたとしたら?
こんな道もないところから抜け出るために必要なものを用意していたとすれば。
ありがとうnao。見つけてくれて。
花
メッセージはすぐ目の前にあって、必要とするその時までずっとその場で待ち続けている。
そして、自分たちも誰かにメッセージをここに残さなければならない。
未来の二人が見つけるために、今できるメッセージをここに残そうか。
あなたにも、あなたを待ち続けているメッセージがある。
もう一度行こうあの場所へ。まだ見つけていないものがそこにはあるから。
続く
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